【永久保存版】実体顕微鏡とは?
実体顕微鏡、生物顕微鏡、金属顕微鏡、電子顕微鏡、マイクロスコープ…顕微鏡って見た目は似ているのに呼び方がたくさんあって違いがわからない!そんな機材担当の方や、今まさに顕微鏡の購入を考えている方へ、今回は中でも最もお問い合わせの多い「実体顕微鏡」について、見分け方や特徴、仕組みの違い、オススメの実体顕微鏡まで詳しく解説します。
1. 実体顕微鏡とは?
実体顕微鏡とは、総合倍率7〜45倍程度の低倍率な顕微鏡の総称です。皆さんが顕微鏡と聞いて一番にイメージするであろう「光学顕微鏡」(理科で使ったようなやつ絵文字)の総合倍率は40〜1000倍もあるので、まず倍率による違いによってこれらは大きく分けられます。
実体顕微鏡の倍率はこれくらい
↓↓実体顕微鏡の拡大範囲はこんな感じ↓↓
こんな感じで、接眼レンズを覗きながら拡大時(45倍)と縮小時(6.7倍)の時のまるく見える外周をなぞってみると、その倍率時に見えている範囲が直感的に分かります。[続く] pic.twitter.com/SUlwzRr1qS
— マイクロネット (@micronet5525) February 15, 2024
光学顕微鏡との違いという点でいうと、もうひとつ大きな違いがあります。それは、実体顕微鏡はプレパラートを作る必要がないという点です。
皆さん覚えていますか?
タマネギをカミソリでスライスして、スライドガラスに乗せて、カバーガラスを端から気泡が入らないようにそっと被せて・・・って理科の実験でやりましたよね。こういった観察前の事前の準備を基本的にする必要がないのが実体顕微鏡です。
実体顕微鏡は倍率が低く、また対物レンズとサンプルとの距離(W.D.)が広いため、身近なものをそのままステージに置くだけ、もしくは手に持ったまま観察できます。数ある顕微鏡の中でも実体顕微鏡は、虫眼鏡(ルーペ)の延長にある機材というイメージが近いと思います。
「なんとなく見えるけど、細かいとこまでよく見えないな・・・」というくらいのサイズ感を拡大するのが実体顕微鏡(7〜45倍)の活用領域です。
逆に、肉眼ではただの点にしか見えないようなまさにミクロなものを拡大するのが光学顕微鏡(40〜1000倍)の領域です。
目視の延長としての感覚に近いのが実体顕微鏡
え、ちょっとまって。光学顕微鏡にも40倍があるのであれば、実体顕微鏡と同じように使えるの?
・・・いいえ。光学顕微鏡は対物レンズとサンプルの距離(W.D.)がとても近いため、実体顕微鏡のように手に持てるような大きなものの観察には向きません。また、焦点深度(ピントが合う奥行き方向の長さ)も非常に浅いため、凹凸があるようなサンプルだと極端に一部にしかピントが合いません。つまり、立体物の観察には向いていないのです。
(左)光学顕微鏡 (右)実体顕微鏡
このように実体顕微鏡は、
肉眼で見えるくらいの比較的大きなサンプル、また立体的なサンプルの観察に向いている低倍率の顕微鏡
ということになります。
立体的なサンプルの観察に向いている秘密については、3. 実体顕微鏡の種類について でも詳しく解説します
2. 実体顕微鏡はどんな用途に適している?
実体顕微鏡は非常に幅広い用途で使われています。部品検査、異物混入検査、ハンダ付け作業、歯科技工、宝石鑑定、昆虫観察、水生生物観察、材料工学研究、さらには模型工作など趣味の領域まで。そのなかでも特に、手先で作業する観察に最も適した顕微鏡です。
WDが十分に広いので工具を使った作業もできる
これはなぜかというと、実体顕微鏡は観察対象の”立体視”ができる顕微鏡のため、拡大観察しながらも距離感をつかむことができるという構造的な特徴があるからです。これにより、ハンダ付け作業であったり、加工や細かい絵付けであったり、さらに言えば外科手術(手術顕微鏡も実体顕微鏡の仲間)なんかも出来ちゃうわけです。
これには、実体顕微鏡の構造が関係しています。詳しくは次で説明しましょう。
3. 実体顕微鏡の種類について
実体顕微鏡は大きく2種類に分けられます。グリノー式光学系とガリレオ式光学系です。
(左)ガリレオ式光学系実体顕微鏡 (右)グリノー式光学系実体顕微鏡
最も一般的で普及している実体顕微鏡はグリノー式光学系と呼ばれる、左右の接眼レンズから対物レンズへつながる光路がナナメに設置されている構造の実体顕微鏡です。左右の目で一点を観察するように、視線を延長するかたちで光路が配置されているため、日常生活で物を見るのと同じように、像を立体的に見ることができます。手元の距離感がつかめるので、観察しながら作業をするのに非常に有効です。
グリノー式光学系の光路はナナメに配置されている
グリノー式に対して、左右の光路が平行に設置されたガリレオ式光学系の実体顕微鏡もあります。これはグリノー式に比べて比較的高価であり、あまり一般的とは言えません。研究や鑑定・鑑識など高度な観察が必要な現場で使われています。ガリレオ式の特徴としては、光路がナナメではなく平行に設置されている影響で、グリノー式に比べ像の立体感が薄いという点が挙げられます。ではなぜ高価なのかと言うと、光路が平行であることによって、多様なカスタマイズが可能になるメリットがあるからです。ガリレオ式光学系の実体顕微鏡は光路が平行であることにより、接眼レンズから対物レンズの間の平行区間を自由に延長できる構造になっています。これにより、間に照明を入れ込んだり、絞りを入れたり、ビームスプリッターで分岐したりと、まるでブロックのようにユニットを追加することで、高度な観察を行うことができるようになるのです。
ガリレオ式光学系の光路は平行に配置されている
それぞれの特徴をまとめると以下のようになります↓
グリノー式光学系の実体顕微鏡とは?
① 左右の接眼レンズから対物レンズへつながる光路がナナメに設置されている構造の実体顕微鏡
② 観察対象を立体的に見ることができる
③ 比較的安価
ガリレオ式実体顕微鏡とは?
① 左右の接眼レンズから対物レンズへつながる光路が平行に設置されている構造の実体顕微鏡
② 立体感はグリノー式に比べて薄い
③ 各種ユニットを追加することで高度な観察が可能。比較的高価
実体顕微鏡か光学顕微鏡かの見分け方はこちらに詳しくまとめてあるのでご覧ください→「光学顕微鏡?実体顕微鏡? 顕微鏡の見分け方」
4. 実体顕微鏡に照明って必要?
実体顕微鏡には照明が絶対必要です。よほど夜目が効く方なら別ですが、顕微鏡は拡大するほど取り込む光の量が減り、視界は暗くなります。そのため室内光だけでは観察に不便です。懐中電灯なんかで照らしてもよいですが、しっかり取り付けできるリング照明を用意するのがよいでしょう。
5. おすすめの実体顕微鏡は?
どの実体顕微鏡にすればよいか迷っているとしたら、まずは次の5つの条件に合致する実体顕微鏡を選ぶことをおすすめします
① 倍率7〜45倍程度
② グリノー式光学系
③ 双眼タイプ
④ ダイヤルズーム式
⑤ ポール型スタンド
理由は次に解説します。
① 倍率7〜45倍程度
一般的で最も実用的な実体顕微鏡の拡大範囲です。
② グリノー式
実体顕微鏡の種類についてでも解説した通り、グリノー式の実体顕微鏡は安価であり、最大の特徴である立体視を得やすいため、よほど高度な観察が必要といった事情がない限りはグリノー式の実体顕微鏡を選ぶのがよいでしょう。
③ 双眼タイプ
写真や動画を撮影する必要がなければ双眼タイプでよいでしょう。双眼タイプとは、左右の目で覗く2つの接眼レンズのみを有したタイプです。カメラを取り付けるための3つめのポートを有したタイプは三眼タイプと呼称します(三眼タイプについて詳しくはこちら)。
④ ダイヤルズーム式
グリノー式の実体顕微鏡には、レンズ切り替えによる変倍方式のものと、ダイヤル操作でのズーム方式のものがあります。レンズ切り替え式は10倍/20倍もしくは20倍/40倍など、倍率を2段階で切り替えるものが一般的です。そのため、各倍率間での調節ができず、倍率の幅も狭いです。一方でダイヤルズーム式は7倍〜45倍程度までシームレスにズームできるので、見たい倍率に調整しながら観察することができます。
⑤ ポール型スタンド
一般的にポール型スタンドとボックス型スタンドの実体顕微鏡がありますが、おすすめはポール型です。ポール型スタンドは、背後のネジを緩めるだけで顕微鏡部分がフォーカスユニットごと取り外しできるため、必要に合わせてロングタイプのスタンドにしたり、アーム式スタンドにするなどの拡張性があります。
以上5つの条件を満たす実体顕微鏡としておすすめなのは、双眼ズーム式実体顕微鏡 ズン太2 YS02Z2
です。
実体顕微鏡として最も標準的な性能で、安価なのに安心の国内品質・長期3年保証で人気のロングセラー製品です。無料貸し出しもございますので、購入前にお試しいただくことも可能ですのでご検討ください。
6. <おまけ>実体顕微鏡で写真や動画を撮りたい
カメラを取り付けて写真や動画を撮りたい場合には、三眼タイプの実体顕微鏡を用意するのがよいでしょう。三眼鏡筒の規格としては、”Cマウント”が近年は最も一般的で汎用性も高いため、Cマウントの三眼顕微鏡を選択することをおすすめします(顕微鏡におけるCマウントとは?)。ちなみに、Cマウントにはレンズの入っていない1倍のCマウントと、レンズが入った変倍Cマウントがあります。使用するカメラやアダプターの種類によって異なりますので注意してください。顕微鏡撮影におすすめのカメラについてはこちらに詳しくまとめてあります。
7. まとめ
いかがでしたでしょうか。実体顕微鏡について、ここまで抑えておけば間違いないでしょう。加工・工作を伴う工場であったり、薬品を扱う研究所であったり、長時間稼働する検査ラインであったり、お仕事の現場を支える頑張り屋がこの「実体顕微鏡」です。Amazonで安価な製品も購入できますが、やっぱり安心の日本品質・長期保証であるマイクロネットの実体顕微鏡をぜひご検討ください!
それでは、また次の投稿で。